2023-05-17

●フランスの学者クール・ド・ジェブランの18世紀の「原始世界」という百科事典的なシリーズの中に、タロットについて述べられた部分がある。これは初めてタロットを「古代エジプトを起源とした、失われた叡智を伝えるものだ」とする、エソテリック・タロットの源流となる書物。これが日本語訳された。

歴史的事実としてはエジプト起源説は間違っているのだが、昨日のポラックさんの本でもあったように、この想像力かきたてる説は後のタロット世界を大いに活性化させる。エテイヤも、エリファス・レヴィも、パピュスも、オズワルト・ヴィルトも、黄金の夜明け団も、ウェイト=スミス版も、クロウリーも、トートタロットも、このジェブランの説がなければありえなかったかもしれない。

当時、ヨーロッパ各国ではタロットは主にカードゲームとして遊ばれていたが、フランスではタロットゲームはすでに「時代遅れ」として廃れている。ジェブランはあるパーティに他国人が持ち込んだタロットを見て「これはエジプトの叡智・・・!」とひらめく。すでにフランスではタロットが一般的ではなく、ジェブランにとっては新鮮なものに映ったため。まだカードゲームとして普通に遊んでいる国の人だったら、タロットはありきたりすぎてこんなこと思いつかなかったに違いない。一度カードゲームとして廃れたからこそ、新しく「古代の叡智」としてタロットは生まれ変わった。

当時フランスではエジプトブーム。エジプトの謎を体系的に研究することはまじめな哲学的探求と考えられていた。ただし、エジプト考古学が始まるきっかけと言われるナポレオンのエジプト遠征には30年弱ほどまだ早い。実際のエジプト文化とはかけはなれたクリエイティブな推測もまかり通っていたのがこの時代。

この本ではタロットを(想像力豊かな一部架空の)エジプト文明と結びつけることと、占いとして使うための方法が記されている。

中国の漢文(ちょうど77文字でできていたやつ)とタロットを当てはめるみたいなこともやっている。いや、ちょうどその文字数あったやつだったらなんでも当てはめりゃいいってもんじゃないだろ!とは言わない約束(単に治水事業についての行政文書だったみたいだし)。

この本に掲載の占いの技法は、以前グリアさんがご自身の協会であるT.A.R.O.T.のニュースレターで解説している。グリアさんは「最古のタロットスプレッド」と言っているが、これをスプレッドと言っていいかはよくわからない。少なくともレイアウトとポジションの意味が決まっているようなスプレッドではない。

ジェブランの本だけでも、グリアさんのニュースレターだけでも、よくわからない部分があった。2つの資料からまとめたものをここに置いておく。一部、やりやすいようにグリアさんのアレンジも入っている。実占の現場に耐えるうかは検証が必要だろう。

M**伯爵による「最もシンプルでパワフルなスプレッド」

二人で行うのがベスト。
大アルカナと小アルカナの山に分け、各自が一つずつ山をシャッフルする。

A氏は小アルカナの山を取り、「エース、2、3・・・10、ペイジ、ナイト、クイーン、キング」と数えながら1枚ずつカードをめくる。キングまできたら再びエースから。
口にした数字やランクと、めくったカードが同じだったら、それは脇に置いておく。

B氏は大アルカナの山を取る。A氏がカードを置くたび、裏向きのまま大アルカナの山からカードを一枚置く。A氏がカードを脇に置いたときだけ、大アルカナを表向きにしてその隣にペアとして取り置く。B氏のカードがなくなったら、脇に置かなかったカードをもう一度取り上げ、しかし今度は逆の順番にして続ける。

A氏のカードがなくなるまで繰り返す。脇に置かれた小アルカナ1枚+大アルカナ1枚のペアを一組ずつリーディングしていく。

ペアで読むとき:
それぞれの大アルカナが告げる吉凶は数札と組み合わせて読み解く。
強弱は数札によって決まるが、これには大アルカナに記された番号を乗ずる(掛け算する?)。
「狂気(愚者)」は番号がなく、0としてあつかうのでなんの結果も生まない。

ともかく貴重な歴史的資料が日本語に訳されたのは大変ありがたい。特に原書仏語のやつは本当にありがたい(自分で読めない)。

●ポラック「A WALK through the FOREST OF SOULS」も引き続き読み進める。「タロットはどうやって機能するのか?」問題について考える章。ユングのシンクロニシティや、量子力学の量子もつれや、中国の道教や、アフリカの占い「イファ」などを使って考察していくが、最終的にこれも「タロットが本当に機能するならタロットに直接聞いたらええやろ!」となる。ということで、「タロットはどのように機能するのか?」という問いを立てたタロット・リーディングが始まる。エキサイティング・・・!

●グリア「タロットワークブック」読書会。月に一度、zoomで集まる。今日は「地、水、風、火の浄化」のビジュアライゼーション・ワークを行う。結構イメージすることが多くて、忙しかったもよう。

参加者の方が、カップの2から「自分の気持ちは自分でわかってあげるしかなかった」と導き出されていたのが興味深い。カップ2の絵は二人の人物が心を交わしているが、自分で自分の心を認識し、わかってあげる、という形で現れることもあるのか、と。そうなると、エースでは気持ちそのものはあるが、まだ誰にも(自分にすらも)認識されていない感情である可能性もあるのかもしれない。


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